過去5年間の経営データ分析で患者分布の変化を把握。長期的な視点で「いま打つべき手」を考える
- 企業名
- 株式会社桜々(さくらら)
(店舗名:ゆうき薬局)
- 都道府県
- 東京都
- 運営店舗数
- 1店舗
お話をうかがった方
- 代表取締役
- 上野 孝幸氏
- 課題
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- データ分析を効率的に行いたい
- 患者さんの受診動向の変化を把握したい
- 近隣エリアの医療機関の新規開業を把握したい
- 決め手
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- 店舗に行かなくても状況を把握できる
- 集計作業なしで売上状況、患者動向が確認できる
- 患者分布で商圏を見える化できる
- 効果
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- 患者動向の変化に応じた施策の検討と実施
- 患者分布に基づいた在宅戦略の立案
- スタッフとの円滑なコミュニケーションの実現
周辺エリアの変化とともに患者動向はどのように変化しているのか
私は2020年に「ゆうき薬局」を継承しました。薬局自体は20年の歴史があって、地域の皆さんに利用いただいています。ゆうき薬局とは継承前から関わりがあり、以前から地域とのつながりを大切にしている薬局さんだと感じていました。「地域の薬局」というあり方に共感していたことも事業継承を決意した決め手の一つですので、今後もその方針はぶらさずに運営していきたいと考えています。
直近では月に2000枚超の処方箋を応需しています。近隣エリアからの処方箋の応需率も比較的高く、地域の皆さんに広く知っていただいている薬局だと思っています。ただし、新しい医療機関ができると当然患者さんの受診行動も変化します。今までAクリニックの処方箋を持ってこられていた患者さんがB診療所の処方箋を持ってきたり、最近では新型コロナの影響でそもそも受診数が下がったり。この流れの中で、周辺の医療機関の状況とともに自薬局の状況についてはどう変化しているのか、データで定量的に掴んでおくべきだと考えています。
「患者分布状況」機能で過去5年間の推移をチェック
digicareアナリティクスはレセコンのデータを基に、集計の手間なしで過去の推移や患者さんのエリア分布を確認できるので、当薬局に来ている患者さんの住所を地図上で示してくれる「患者分布状況」で自社の商圏を確認しています。
※画像はエリア分析(患者分布状況)画面サンプルです
直近5年分のレセコンデータをアップロードしているので、継承前と後の比較もできるようになっています。例えば、「5年前の患者分布に対して、今の患者分布がどう変化しているのか」を視覚的に確認することで、継承前後での患者さんの動向を把握することができます。
仮に特定の医療機関さんからの患者さんが減っているエリアがあったとします。そのエリアついて調べてみると、新しい医療機関さんができていることがわかった。この場合はそのエリアの患者さんが新しいクリニックに移っていて、処方箋はその近くの薬局に持って行くようになったのかもしれない、と推測することができます。
近隣に新しい医療機関ができたことで、自薬局にどういう変化があったのかを考えておくことは、長期的な戦略を立てる上でも重要だと思っています。digicareアナリティクスの患者分布機能では、その周辺の医療機関や薬局の分布も重ねてみることができるので、患者の動向の変化を考える上でとても役に立っています。
患者分布の変化は医師とも共有
また、digicareアナリティクスの「患者分布状況」機能では、医療機関別に色分けもされます。この機能は医療機関の院長先生との情報共有に活用しています。例えば、門前の医療機関さんの色に注目して、「先生の患者さんの分布は、1年前と比較すると広がっています/狭くなってきています」と画面を見てもらいながら説明することができます。
医療機関の方では、そこまでシビアに患者動向を気にされているわけではないのですが、それでも周辺のエリアでの患者さんの動向に変化があると、何か施策を打っていこうか、という話の流れになったりもします。先日も、お話している最中に、「美容目的の皮膚科さんですとホームページでの情報発信が重要ですね」という話になり、その流れでホームページをリニューアルされた医療機関さんもありました。
また「流入分析」機能の「医療機関」では、処方箋を応需している医療機関のリストが、シェアの高い順に一覧表示されるので、医療機関への営業活動に役に立っています。
※画像は流入元分析画面サンプルです
データ分析のために休日に薬局に来ていた
digicareアナリティクスを初めて知ったのは、2022年秋の展示会でした。レセコンのデータを自動で集計してくれて各種分析ができると聞き、「それは使わなくては」とすぐに思いました。
もともと薬局経営のマネジメントに関わる仕事をしていたこともあり、データ分析の重要性は良くわかっていました。しかし、レセコンのデータは店舗でないと見ることができません。薬局の業務中に確認するのは難しいため、終業後や休日に店舗に行って処方箋枚数や単価、売上の推移を確認していました。
今では店舗に来なくても、また、データを自分で集計しなくても基本的な指標の確認・比較ができるので非常に助かっています。導入前は毎月1~2時間はレセコンデータの集計に時間を取られていましたし、事務所から薬局に来るためには移動時間もかかります。決算前は月に一度以上の頻度で薬局に来ていましたので、集計作業にかかる時間もちろん、収益につながらない移動時間も削減できることになりました。
スタッフとのコミュニケーションツールにも
digicareアナリティクスを導入してからは、毎日、各指標の変化を見られるようになりました。店舗にいなくても速やかに見られるので、毎日必ずdigicareアナリティクスを見ています。薬局経営の状況を常に把握しておきたいというのは薬局経営者の皆さん同じだと思いますが、私も今ではdigicareアナリティクスを1日2回は見ないと落ち着かないですね。
月平均、年平均の処方箋枚数はだいたい把握できているので、それに比べて、現状が大きく落ち込んだりしていないかをよく気にして見ています。落ち込んでいる場合はその要因を分析します。
店舗に私がいない場合であっても薬局の状況が把握できることは、店舗スタッフとスムーズなコミュニケーションの基盤にもなります。数値の管理というだけでなく、スタッフに「忙しかったね」と一言かけるだけでも、社内の雰囲気は変わります。そういう面でも、リアルタイムで状況が分かるのはとても良いですね。
データは速やかに把握、「打てる手」の検討は長期目線で
リアルタイムで店舗の状況が分かることによって、今あるデータから「打てる手」を検討できる、つまり長期的な戦略を考えることができます。
店舗スタッフへの経営状況や目標の共有には、主に年単位のデータを使っています。私がデータを分析した上で、「売上は増えたのか減ったのか」、「増えている/減っているのはなぜか」という要旨をスタッフに伝えています。処方箋を応需している上位の医療機関の推移はどうなのかなどはdigicareアナリティクスの医療機関別分析で見られるので、そこで把握し、「もう少し面の処方箋を増やせるようにしよう」などの話をします。
今後は地域包括ケアへの貢献度を高めること、具体的な項目でいうと、地域支援体制加算の算定が重要になってきます。そのためには、在宅医療への取り組みが必要になります。
digicareアナリティクスは未来の在宅戦略にも生かせる
在宅事業を拡充するにあたって、現状では患者さんはどのエリアからどのくらい来ているのか、これもdigicareアナリティクスの患者マップで確認することで戦略を立てやすくなると思います。薬局から一番遠い患者さんであれば、どのくらいの距離があるのか。その距離も抑えつつ、どこのエリアを在宅医療の重点地域にしていくか、なども検討しています。限られた人員で在宅対応をする必要があるので、どのくらいの範囲であればカバーできるのか、スタッフと患者マップを見ながら検討を進めています。
5年分のレセコンデータから集積された患者マップは、今後、どのような地域で在宅医療が必要になるか、非常に参考になるデータではないかと思っています。それに備え、戦略を立てていきたいと思っています。
今後はオンライン服薬指導と薬の配送ニーズが高くなって、そういった取り組みをしている薬局に患者さんが流れる傾向になる可能性もあると思っています。今後の流れが読めない中でも、データを分析して、その上で先をみた戦略を立てられる体制を作っていくことが存続する薬局の条件になってくるのではないでしょうか。